写真のサイズを考える

『当フォトコンの応募は六切~四切の間のサイズでお願い致します。なおワイドは不可と致します。』
どれくらいの方がこの文章を正確に把握できているのか。写真サイズは、その独特な呼称と様々なサイズが入り混じることにより、一般の方からすれば正確な大きさがイメージしずらくなっているような気がします。

今回、現在(2016年時点)普及している写真サイズやその出力方法と、また将来主流となってくるサイズとはどのようなものか、写真サイズを切り口に色々考察していきます。

写真サイズについて考える

考える関連まとめ

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写真の規格サイズ・用紙面積

下表に写真サイズとその用紙面積をまとめています。(用紙面積㎡は、用紙コストを考える際、必要な情報となるため併せて記載しています。)
現在、一般の写真店でプリントできたり、手焼き・自宅インクジェットプリンタ用として入手できるサイズのみここでは記載しています。

写真サイズ 寸法(mm) 寸法(m) 用紙面積(㎡)
DSC 89 x 119 0.089 x 0.119 0.0105
L判 89 x 127 0.089 x 0.127 0.0113
パノラマ 89 x 254 0.089 x 0.254 0.0226
はがき 100 x 148 0.1 x 0.148 0.0148
KG判 102 x 152 0.102 x 0.152 0.0155
2L判 127 x 178 0.127 x 0.178 0.0226
グランド 127 x 210 0.127 x 0.210 0.0267
六切 203 x 254 0.203 x 0.254 0.0516
ワイド六切 203 x 305 0.203 x 0.305 0.0619
A4 210 x 297 0.21 x 0.297 0.0624
9.5″ x 12″ 240 x 305 0.24 x 0.305 0.0732
四切 254 x 305 0.254 x 0.305 0.0775
ワイド四切 254 x 365 0.254 x 0.365 0.0927
11″ x 14″ 279 x 356 0.279 x 0.356 0.0993
A3 297 x 420 0.297 x 0.42 0.1247
A3+(ノビ) 329 x 483 0.329 x 0.483 0.1589
16″ x 20″ 406 x 508 0.406 x 0.508 0.2062
A2 420 x 597 0.42 x 0.597 0.2507
20″ x 24″ 508 x 610 0.508 x 0.610 0.3099

写真サイズというのは、時代の変化・プリンターの発展に併せて、新しいサイズが設定されたり、古いサイズが消えていったりという風に移り変わっていっています。

現在(2016年時点)の写真のサイズとは、下3タイプが混在・共存していると言えます。
1.DPEショップ(写真店)での受付サイズ
2.モノクロ手焼き時代からの印画紙サイズ
3.インクジェットプリンタの登場により一般的になってきたサイズ

タイプ毎に詳述していきます。
1. DPEショップ(写真店)での受付サイズ:
DSC、L判、パノラマ、KG判、2L判、グランド、六切、ワイド六切、四切、ワイド四切がこのタイプに当たります。

DPEショップとは、それぞれ「Development(現像)」、「Printing(焼付け)」、「Enlargement(引伸ばし)」という写真処理工程の頭文字になり、一般には、写真店と呼ばれ、一連の工程を行う写真処理器フジフィルム「フロンティア」やノーリツ「QSS」といったミニラボを導入している店舗のことを言います。

DPEショップでのプリントの大半は、全世界共通でフロンティアかQSSのどちらかで処理されており、両機ともインチ単位のロール印画紙を使用するため、最小幅3.5″(89mm)から、4″(102mm)、5″(127mm)、8″(203mm)、10″(254mm)、最大幅12″(305mm)までの出力サイズに限定されます。
お店プリントや銀塩プリントとも呼ばれています。

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2.モノクロ手焼き時代からの印画紙サイズ:
2L判、六切、9.5″ x 12″、四切、11″ x 14″、16″ x 20″、20″ x 24″がこのタイプに当たります。

旧来の手焼き印画紙の原板サイズ大全紙を幾つに切ったかに由来しており、写真サイズの名称の中で、“~切”(せつ、きり、ぎりと読む)に名残りを感じることができます。
デジタル全盛の今日においても、未だに一部愛好家や大学写真部などでは親しまれており、暗室作業による手焼きでのプリント作業に用いられる印画紙に多く見られる写真のサイズになります。

darkrromshow

3.インクジェットプリンタの登場により一般的になってきたサイズ
A4、A3、A3ノビ 、A2がこのタイプに当たります。

インクジェットプリンタは、コピーなどオフィスのドキュメント用途として先行普及したため、A判サイズがベースとなっています。その後、プリンタ・インク・用紙それぞれの技術の進歩により、従来の銀塩写真に匹敵する品質のプリント出力が可能となりました。これに伴い、DPEショップ(写真店)を利用せず、自宅でキヤノンやエプソンのプロシリーズプリンタを用いA3やA3+(ノビ)といった大判のプリント作業を行う新しいトレンドも生まれました。

また、元々は縁なし印刷のできないプリンタが多かった時代に、A3サイズ全面のプリントを作りたい時に余白を切り落として使うという目的からA3+(ノビ)サイズが設定された経緯があります。

inkjetprinterandink

 

規格外の大型サイズ

最近では、規格外の大型サイズの展示も増えてきています。
日本大判寫眞家協会では、四全倍(1200x1800mm))というサイズでの展示も、、

一応下表の如く、大型サイズの規格があるのですが、大型サイズの展示には、作家それぞれ空間に併せた独自のサイズを使用しているケースが多いように感じます。

写真サイズ 寸法(mm) 寸法(m) 用紙面積(㎡)
A1 594 x 841 0.594 x 0.841 0.4996
B1 723 x 1030 0.723 x 1.030 0.7447
A0 841 x 1189 0.841 x 1.189 1.0000
B0 1030 x 1456 1.030 x 1.456 1.5000
全倍 610 x 900 0.610 x 0.900 0.549

大型サイズの写真プリント出力について
また、日頃DPEショップ(写真展)やキヤノンやエプソンの自宅用プロ向けインクジェットプリンタを使用されている方にとっては、規格外の大型サイズは、どのようにプリントされているのか?、何か特別で高級な機器が使用され、品質も格段に良いのではないか?と思われる方もいらっしゃると思いますが、基本的には、普段のプリント方法と技術的な違いはありません。同じ 1. 銀塩プリント や 2. インクジェットプリントになります。

それぞれのプリントの特徴については別まとめに譲りますが、ここでは簡単にそれぞれのプリンタの紹介までに。

1. 銀塩プリント
上記で紹介したDPEショップ(写真店)に導入されているようなミニラボでは、最大幅12″(305mm)であり、それ以上の大型サイズのプリントは行えません。
プリントを行うには、プリント作業を集中的に行うプロラボで導入されているような大型銀塩処理機が必要となります。具体的には、LPS-24クロミララムダといった機器になります。

日本国内では稼働台数は限られるため、プリントの値段はかなりお高くなりがちですが、一般のDPEショップ(写真店)の銀塩プリントと比べ、品質・画質の違いはありません。

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2. インクジェットプリント
大判プリンタ、プリントサイズのメモ(屋内用)まとめで紹介しているキヤノン、エプソン、HPの屋内用の水性大判インクジェット機を利用してのプリントになります。
近年、広幅のプリント・展示が増えてきているにも、手軽に大型サイズを出力できるこの手のインクジェット機の普及が一因と考えられます。

 

今後主流となってくる写真サイズ

ここまで通常・大型の写真サイズの『現状分析』について書いてきました。ここからは『将来予想』に関して触れていきます。筆者個人の予想になりますから、幾分偏りがあると思いますので、何卒ご理解の程お願い致します。

インクジェットプリンタにより、壁を一面に覆うような巨大で自由なサイズのプリントも比較的手軽にプリントできるようになった今日、今後は写真のサイズはどのような方向に向かっていくのか。それは我々の日常の暮しの中にヒントがあるような気がします。

つまり、写真をインテリアとして、普段の暮らしの中に取り入れ楽しむという流れです。
これはドカン!と急に盛り上がるという訳ではなく、ジワジワと時間を掛けて浸透してくるもので、もう既に一部流れが、大手アマナ社でのイエローコーナーへの取り組みにも表れています。

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そして、インテリアとしての写真・アートを考えた場合、主流となってくるサイズは以下2点が重要だと考えます。
1. 日本の暮らしにフィットしたサイズ
2. わかりやすいサイズ

それぞれ詳述していきます。
1. 日本の暮らしにフィットしたサイズ
先日、サッカー選手であるクリスティアーノ・ロナウド氏が自身の自宅を公開した動画をSNSでアップしていました。

その中で一際目を引いたのは、氏の自宅には、数多くのインテリアフォトが暮しの中に取り入れられている事でした。玄関から入って最初の部屋の壁に1枚、寝室に1枚、リビングに数多くの枚数、円卓の部屋に3枚という感じで、とても豪華な各部屋にフィットしています。

しかしながら、欧米サイズの部屋にはフィットしていますが、日本の部屋となった場合、いささかサイズが大きすぎるのではないかと勝手な心配をしてしまいます。

今後、日本でもインテリアフォトが認知され、暮らしの中に取り入れる人が増えてくれば、日本の部屋にあったサイズも模索されていくことになるのかもしれません。

2. わかりやすいサイズ
また、そうしたインテリアフォトが消費者にとってわかりやすいサイズであることも重要でしょう。
誰しも家具などを購入する前には、設置スペースを測り、フィットするサイズの商品を選んでいると思います。

翻って、写真やアートのサイズというのは、一般的にはとてもわかりずらくなっています。
写真の四切、六切、絵画などのキャンバスの木枠のF0、P3などは消費者からすれば未知のサイズです。

誰もが大きさをイメージしやすい、mm(ミリメートル)やcm(センチメートル)単位で消費者に訴求するという工夫は非常に有効です。一例ですが、弊社の隠れた売れ筋商品として、キャンバス木枠があります。

cm単位の木枠を2組合わせて、任意のサイズの枠を作るというものですが、写真関連の方だけではなく、デザイン・インテリア、ファブリックパネルなどの製作を考えている主婦の方まで幅広い層に重宝されています。
ヒットの要因として、サイズがイメージできることが大きいのではないかと感じています。

 

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