アクリル絵具、メディウムについて

創作物の品位や価値を如何に向上させるか。
この点はデジタルアート作家、工房などが腐心しているポイントであり、世界的に研究・試行錯誤がなされています。
デジタル素材の強みである制作における高生産性と、アナログ素材の強みであるオリジナリティの付加価値を併せるという、デジタル素材とアナログ素材の融合ミックスドメディア(Mixed Media)に答えの一つの方向性があるのではないでしょうか。

今回、デジタル素材インクジェットキャンバスとの使用に相性が良いアナログ素材アクリル絵具とメディウムについて紹介したいと思います。写真作品であれば、作家のシグネチャー(サイン)などに利用できる他、イラスト・ファインアートリプロダクション(原画複製)においては、プリント後、再加筆、盛り上げによる立体感の演出をすることができます。

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付加価値プリントの研究まとめ

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アクリル絵具、メディウムとは?

アクリル絵具
アクリル樹脂をベースにした1950年代という比較的近年に開発された絵具。
第二次世界大戦後、アートシーンの中心がヨーロッパからアメリカに移る過程で、新しい表現、技法、材料の追及に拍車がかかっていた1950年代に開発されたアート素材であり、現在多くのクリエイターに支持されています。

特徴としては、下記の如く、
1.水彩絵具のように水に溶け、濃い目にして塗れば不透明に、薄めれば透明と濃淡表現が可能。
2.油絵具のように重ね塗りができる。
3.メディウムを使い様々な表現が可能。
4.紙やキャンバス以外にも、石、布、木、皮、コンクリートなどあらゆる素材の上に描くことができる。
5.乾いた後は耐水性および強い接着力を持ち剥離しにくい。
6.耐久性に優れ屋外展示作品にも使用できる。
使用上の注意点としては、乾いてしまうと使えなくなるので、チューブから出した後は使いきる必要があります。

メディウム
日本語で直訳すれば「媒剤」、アクリル絵具の補助絵具。
アクリル絵具に混ぜ込んだり、単体で使ったりすることで様々な表現を演出することができます。
下はターナー色彩社のアーティストカラー(商品名)用メディウムの使用例になります。

ドローイングメディウムは、乳白色で柔らかく、粘り気のある水性ペーストで、乾くと透明になります。
絵具と混ぜて筆塗りをすると、柔らかく、なめらかなタッチになり、多く混ぜるほど、柔らかさ・
なめらかさが増し、ツヤと透明感が出ます。

ゲルメディウム(マット)は、乳白色の水性ペーストで、乾くとツヤ消しの透明になります。
塗膜は固くすぐれた耐水性と耐候性を持ちます。絵具と混ぜるとツヤをおさえた透明感がでます。
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ゲルメディウム(グロス)は、乳白色の水性ペーストで、乾くと透明になります。
塗膜は柔軟で、すぐれた耐水性と耐候性を持ちます。絵具と混ぜて使うと、ツヤと透明感のある厚塗り、
盛り上げができ、多く混ぜるほどツヤと透明感が増します。

コースゲルは、細かな粉が入っているため、ざらざらした独特の質感を得ることができます。
絵具と混ぜるとその量によって、さまざまなテクスチャーが表現できます。白色の水性ペーストで、
乾くとツヤ消しの塗膜になり、すぐれた耐水性と耐候性をもちます。
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モデリングペースト(ノーマル)は、白色で粘度の高い水性ペーストで、すぐれた耐水性と耐候性
をもちます。絵具に混ぜても色調はほとんど変わらず、そのまま使うと不透明でツヤ消しの盛り上げができます。
乾燥すると約40%のヤセが生じるのでご注意ください。
約3cmの盛り上げを完全乾燥するのに、気温20℃で約3~6日かかります。

モデリングペースト(ソフト)は、白色で粘度の高い水性ペーストで、弾力性がありすぐれた耐水性
と耐候性をもちます。そのまま使うと不透明でツヤ消しの盛り上げができます。
絵具に大量に混ぜると少し明るい色調になります。
乾燥後は他のモデリングペーストの1/5程度の軽さになり、約30%のヤセが生じますのでご注意ください。
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モデリングペースト(パステル)は、白色で粘度の高い水性ペーストで、すぐれた耐水性と耐候性
をもちます。そのまま使うと不透明でツヤ消しの盛り上げに、絵具と混ぜるとパステルトーンの盛り上げができます。
乾燥後は約40%のヤセが生じるのでご注意ください。
約3cmの盛り上げを完全乾燥するのに、気温20℃で約3日間かかります。

ジェッソは、被覆力と接着力にすぐれた下塗り用白色絵具です。絵具本来のあざやかな色を再現します。
約30%の水で薄めてハケやローラーで塗ってください。2度塗り重ねると、より美しく平滑に仕上がります。
気温20℃の場合、指触乾燥まで約30分、塗り重ねできる乾燥までは約2時間が目安です。
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上述の如く多彩なメディウムの種類があり、表現に併せて使い分けることができます。

 

海外、国内問わず多数あるメーカー

上記の説明でアクリル絵具とメディウムは様々な特徴、および表現の幅の広さを有した絵具であることは理解して頂けたと思います。
その優れた点が多くのクリエイターに評価され、国内外問わず、多数のメーカーがアクリル絵具の製造に携わっています。

(国内)
ターナー色彩
ボルベイン工業
マツダ油絵具
ニッカー絵具製作所
(海外)
GOLDEN Artist Colors, Inc
Grumbacher
Royal Talens
Winsor&Newton
H. Schmincke & Co. GmbH & Co. KG
Lascaux Colours & Restauro, Barbara Diethelm AG
Liquitex

上記以外にも大変多くのメーカーが製造・販売しています。
 

アクリル絵具とアクリルガッシュの違い

また、アクリル絵具には、詳しくは『アクリル絵具』と『アクリルガッシュ』という2つの種類があります。

どちらもアクリル絵具ということで違いはないのですが、成分のアクリル樹脂・顔料の含有率に違いがあります。
『アクリル絵具』の方は透明性やツヤを出すのにアクリル樹脂エマルジョンが多く、顔料が少なく、
『アクリルガッシュ』は、マットで鮮やかな発色で不透明に仕上げるため、顔料が多く、アクリル樹脂エマルジョンが少なくなっています。

そもそも『ガッシュ』とは、透明水彩の反対であるイタリア語のGuazzo(水溜り、不透明水彩技法)から来た言葉といわれ、不透明水彩技法全般のことを指すことから、直訳的には、『アクリルガッシュ』は、『不透明なアクリル絵具』ということが言えると思います。
それぞれ特徴の違いはざっくりですが以下になります。

アクリル絵具
・ツヤ有り、グロス調の仕上り
・透明、半透明(下の色が透ける、やや透ける)
・盛り上げ可

アクリルガッシュ
・ツヤ消し、マット調の仕上り
・不透明(下の色を覆い隠す)
・盛り上げ過ぎると割れる
 

数あるアクリル絵具、アクリルガッシュの中でどれを選択すべきか

ここまでアクリル絵具・メディウムの特徴、製造メーカーやアクリル絵具とガッシュの違いなど色々見てきました。
しかし、いざアクリル絵具にチャレンジしようとなった時、上述の如く選択肢がメーカー、種類からして多数あり、選択に迷ってしまいます。

一度経験したり、慣れてきさえすれば、自身にあったアクリル絵具を開拓していくというのも面白いと思いますが、初心者であり、インクジェットデジタル素材とアクリル絵具の組み合わてみたいということであれば、ターナー色彩社のアーティストカラーがおススメでしょう。
アーティストカラーは、下画像の如く、盛り上げても割れない強さと、落ち着いたツヤをあわせもつ新しいアクリルガッシュになります。
アーティストカラー
他アクリル絵具、ガッシュと比べた際の細かいの利点はとしては、
・国内産で海外輸入品に比べて価格が抑えられている。
・一通りの表現ができる各種メデュウムが用意されている。
・柔軟で丈夫な被膜を作るので、重ね塗りで盛り上げてもヒビ割れない。
・落ち着いた自然な色彩の絵具であり絵画、写真などと相性が良い。
・塗り方によって、透明度の調整、微妙な変化をつけれる。

などがあります。
アーティストカラーは、ガッシュベースではありますが、アクリル絵具の良い特徴を取り込んだハイブリッドな絵具であり、重ね塗り・メディウムによる盛り上げも演出できることから、デジタル素材とアナログ素材の融合を試したい方には使い勝手が良い素材になっています。

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